「まず見える化」だけで受注現場が回り始めた実例
はじめに
食品製造業の受注は、FAXをやめることから始めなくて構いません。
この事例が示しているのは、紙・FAXの注文書を「見える化」しただけで、現場の混乱と負荷が一気に減ったという事実です。
基幹システムがなくても、Excelと会計ソフトがあれば、十分に改善は始められます。

背景:食品製造業の受注現場で起きていたこと
この会社では、長年次のような受注運用が続いていました。
- 受注の大半はFAX
- 一部はメール添付PDF
- 繁忙期は電話注文も増加
扱うのは定番商品だけでなく、
- 季節商品
- 限定ロット
- 得意先ごとの細かな指定
「早く・間違えず・柔軟に」対応する必要がある一方で、
受注管理は紙とExcelに依存したままでした。
課題:FAX受注が引き起こしていた3つの限界
1. 転記ミスと確認作業が減らない
- 手書き文字
- 余白への追記
- 独自表現の品名
これを人が読み、Excelに入力する以上、
確認の電話や修正作業は避けられません。
2. 受注業務が特定の人に集中
- この得意先の注文はこの人
- この書き方はこの人しか判断できない
結果として、
- 繁忙期は残業が常態化
- 休みづらい
- 引き継ぎが進まない
人で回している業務になっていました。
3. 注文内容が共有されない
FAX原紙は1枚のみ。
- 製造
- 出荷
- 事務
誰かの机にあると、
そこで業務が止まる状態でした。
フェーズ1:自動化しないデジタル化
まず「見える化」だけをやった
最初に取り組んだのは、AI導入でもシステム連携でもありません。
FAXを「紙で扱わない」運用への変更でした。
FAXをPDFで受け取る
- 複合機やクラウドFAXでPDF受信
- 原則、紙に印刷しない
これだけで、
- 探す
- なくす
といった無駄な作業が消えました。
注文書を一箇所に集約
- 日付
- 得意先名
最低限のルールで保存し、
Excelの受注台帳からリンクで参照できる運用に変更しました。
全員が同時に見られる状態に
製造・出荷・事務が、
同じ注文書を同時に確認できる状態を作りました。
フェーズ1の成果:現場が一気に楽になる
この段階で起きた変化は明確でした。
- 転記漏れ・紛失が激減
- 確認電話が大幅に減少
- 「あのFAXどこ?」が消滅
まだ自動化していないのに、現場が回り始めたのです。
フェーズ2:入力作業だけをAIに任せる
次に取り組んだのは、人が最も時間を取られていた転記作業の削減です。
ここで導入したのが、ドキュパカ!受注AIでした。
実施内容
- FAX注文書PDFを自動で取り込み
- 得意先名/品名/数量/納期を自動抽出
- Excelの受注台帳へ自動反映
- 更新内容を関係者に共有
会計ソフトへの直接連携は行っていません。
なぜ会計連携をしなかったのか
この会社では、
- 売上計上や請求は会計ソフト側で管理
- 受注情報は確認・製造・出荷が主目的
そのため、
- 受注段階で無理に会計へ流さない
- 必要な情報だけを人が確認して入力
という運用を選びました。
「全部つなげない判断」も、立派なデジタル化です。
得られた効果
- 受注入力時間を大幅削減
- 入力ミスはほぼゼロ
- 月末残業が解消
担当者は、入力作業から解放され、内容確認や例外判断に集中できる役割へ移行しました。
この事例の本質:デジタル化の成否は「やらない判断」で決まる
この事例で重要なのは、「何をやったか」よりも「何をやらなかったか」です。
- 基幹システムは導入しない
- 無理な会計連携はしない
- 現場が困らない範囲で止める
見える化 → 入力自動化
ここまでで、十分に効果が出ました。
まとめ:食品製造業の受注はこう始める
- 基幹システムがなくても問題ない
- まずFAXを見える化する
- 入力作業だけAIに任せる
- 会計は無理につながなくていい
システムを入れることではなく、現場が楽になる状態を作ることです。
最初の一歩は、
「今、誰が・どの注文を・どこで見ているか」を
見えるようにすることから始めましょう。
